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今のBGMはベートーベン「交響曲第9番<合唱付>」です。
この二人の共通点は両方とも二面性が強いところかな。 力強く、壮麗で、情熱に溢れ返るようなところと、メランコリックな感じがある。 チャイコフスキーはロマン派と印象派、の間の人って感じでしょうか。 非常に強く対象と一体化してしまう傾向をもっていて、外界からの刺激に感動するとそれがそのまんま音楽になってしまうみたい。 子供のころに「音楽がぼくを捕まえて離さない。少しでいいから僕から音楽をとって。」と泣き叫んだようです。 ドイツ人のような自我防衛の強い人からは彼はあまりに素朴で単純で、通俗的だとみなされたようだし、フランス人からは、エスプリもない、感傷的で、ロシア人特有の泥臭さに拒絶反応をしめしたようです。 交響曲の「悲愴」を私は聞いたことがありません。 なぜなら、これはある種の人は「死」へと引きずり込むという逸話が沢山残っているほど伝説の多い曲なのです。演奏中によく人が亡くなるらしいです。チャイコフスキーが死ぬ直前に初演をしたもので、彼の死もほとんど自殺といっていいようなものだそう。幽霊話というよりも、この曲はものすごく暗い陰鬱な曲なのだそうです。チャイコフスキーと波長があってしまう私はとても聞く気になれません。 私にとってものすごく自然で居心地のいいのはチャイコフスキーやショパンなんだけど、ベートーベンの壮麗さには、とにかく圧倒されてしまう。最も優れた音楽家は誰かと聞かれたら、私はベートーベンかな、と思います。ものすごい破天荒な人だけれど、人間の弱さ、醜さを踏まえた上で、苦悩を突き抜け歓喜へ!というものすごい意志の力というか。それでもただ力強いだけではなく、繊細な美しさはまるで満天の星のようであり、雪の結晶のようでもあり、はたまたダイヤモンドのまばゆい光であり、その美しさたるや、何か超越的なものを感じます。 ベートーベンは、ヨーロッパの貴族中心の社会が終わるころに生まれて、民衆が世界の中心となり始め、個というものを生きようとし始めた頃を生きていました。フランス革命を経験して、人々が宗教や領主などとの同一化から始めて分離しはじめ、自己というものに向き合うことを始めたとき。ベートーベンの音楽は、まったく新しいものだったでしょう。モーツアルトのような、ただなんとなく貴族社会の美と調和と同調し、ハーモニーを奏でるようなものから、人間の感情、人間の意思、人間の思想、そういった<人間性>というものを曲に盛り込もうとしたのが、それがロマン主義運動であり、その礎となったのが、ベートーヴェンだったのです。彼はたかだか30年の彼の創作人生において、ものすごい革命を起こしてみせたのです。 それも作品は他の追従を許さないほど、どの派にも属さない独自のもので、だれも真似できない。大天才、神と悪魔の神童です。 チャイコフスキー、ベートーベン、二人とも大変な情熱家で、激しい感情を秘めて、それを音楽にほとばしらせている作曲家だけれど、それがベートーベンでは男性的であって、チャイコフスキーでは女性的だな、と思います。私の中の男性性はベートーベンに打ち震え、女性性はチャイコフスキーに酔うのだと思います。 これから、第9番の合唱がはじまります。 逝ってきます。
by ariadne-dream
| 2004-11-08 21:44
| MUSIC
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